『アメリカの金融危機と社会政策 -地理学的アプローチ-』を読んでみました。
動機
アメリカで起こった金融危機や社会政策の与える世界への影響は、ニュースを通じて情報を得られると思いますが、今回はそうした危機や政策の背景を理解したいと思い読んでみました。
リーマン・ショック
2008年のリーマンショックは、色んな事象が絡みあって起きたため、世界的な影響をもたらしたということにびっくりしました。特に、評価の良くないMBS(住宅ローン担保証券)を売るために幾つかのMBSをごちゃ混ぜにして評価替えをして良いMBSのまとまりCDO(債務担保証券)を作成していたことにびっくりしました。普通に考えて、危険な行為ですし、更にそのCDOを買ってもらう相手は、年金基金を運営している機関でした。全国民からのお金を安全に運営するためにAAA評価の金融商品しか買っていなかったので、それに目をつけて、ワザとジャンクをごちゃ混ぜにしてAAA評価にするという悪質な行為が行われていたと知りました。
さらに、より買いやすくするために、CDS(Credit Default Swap)を利用しました。これは現金と貸し倒れを交換する契約なので、金融危機の影響を増幅させたと知り恐ろしかったです。
南北戦争
南北戦争は、今まで白人に対し黒人が権利を主張するための戦争だと思っていましたが、それだけでなく、保護貿易と自由貿易との争いでもあったということにびっくりしました。
当時の北部は、工業が黎明期でヨーロッパと比べて競争力が劣っていました。そのため、保護貿易による国内工業の強化を主張しました。南部は、農業とりわけ綿花の生産が盛んであったため、それをヨーロッパへ輸出して儲けたかったので、どちらの貿易を優先するかで、戦争したとは知りませんでした。
アメリカが貿易の観点から自由貿易を主張しだしたのは、つい最近の事であることも分かりました。これに倣って日本やドイツも保護貿易⇨自由貿易へとシフトしていきました。
南北戦争で南部が負け、黒人は1960年代になるまで法律等で社会的・政治的・経済的に抑圧されていました。
アメリカにおいて、黒人が白人と同様の所得を得るようになったのが、1960年代以降だと知り驚きました。
まだ50年あまりしか経っておらず、差別が完全に無くなるまでまだまだ時間が掛かりそうだなと思いました。
まとめ
改めて、何か起こった際に一側面から語るのは難しいと思いました。
問題や課題を理解するには、キチンとロジックツリーにして要素分解する必要があるなと感じました。
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